<神様はセキレイから子づくりを教わった?>
七十二候「鶺鴒鳴(せきれいなく)」
別名「オシエドリ」胸を張り尾で叩いて道を説くという意味らしい。
日本各地にはセキレイにまつわる伝承があり、日本列島の中で最初に生まれたとされる淡路島には、セキレイが指導してみせたという「鶺鴒石」がまつられ夫婦や恋人たちの人気スポットになっている。
『日本書紀』にはなんと、あのイザナギの神イザナミの神ご夫妻がセキレイの指導で夫婦和合し「国産み」できたとの記述があるくらいだ。
男女二柱の神イザナギとイザナミが天から降りてきて日本の国を産みだそうというとき、やり方がわからずにいるとセキレイがひょいとやってきて尾を上下に振り、その動きを見てピュアーなふたりは夫婦和合の方法を知り次々と子ども(=国や神)を産んだと記されており、この神様の子どもたちが日本人をつくったとされ、つまりは、セキレイがいなかったら日本人は存在しなかったことになる。
結婚披露宴会場の壁にセキレイが描かれたり婚礼の調度に鶺鴒台があるのは、それに由来するといい、日本のおしどり夫婦の和合と繁栄は、セキレイが導いていたのだ。
<日本で主に見られるセキレイは3種類>
公園などでよく芝生をころがるように歩いている白っぽい鳥が『ハクセキレイ』
川の上流から中流の岩の上など山あいの水辺にいる黒い背中の『セグロセキレイ』
黄色いお腹の『キセキレイ』がある。
<現在は白と黒のせめぎ合い>
日本に多いハクセキレイは、何十年か前までは北海道や東北だけで繁殖し、秋になると本州へやってくる鳥だったそうだ。
いまは都会でも一年中見られ、スズメ・カラス・ハトなどと並ぶ身近な小鳥。
ハクセキレイは日本で勢力拡大中で、神様の恩師と噂される古来からずっと日本だけにいるセグロセキレイが追いやられている。
国産みを指導したのは、純日本産のこの種だったのか、九州から北海道まで分布し、たいてい川などの水辺から離れることなく暮らしているが、対してハクセキレイはユーラシア大陸からアフリカ大陸まで、世界でもっとも広く分布するセキレイ。
近年は水辺を離れて暮らすものも増え、だから街なかでよく見かける。
木の根元や雨戸の戸袋、郵便ポストや放置自転車の前カゴなど、あらゆる隙間を利用して巣づくりし、通常5〜6個の卵を産む。
人のすぐ前を平気で歩いたりする頑丈なハートも持ち合わせていて、いろいろな環境で生きている。
現在日本列島では じわじわとハクセキレイのテリトリーが広がりつつあり、川原などでのバトルでは、追いかけられているのはいつもセグロセキレイ。
<鳴き声>
ハクセキレイは「チュチュン、チュチュン」と澄んだ声で鳴き、セグロセキレイは「ジー、ジー」と濁った声で鳴く。
<謎の習性>
秋冬の間、ハクセキレイは街の道路沿いの街路樹などに集まって「集団ねぐら」で寝ている。
夜になると葉の落ちた街路樹にたくさんのセキレイ型シルエットが浮かび、まるで葉っぱがよみがえったかのように見える事もあるらしい。
昼はそれぞれ単独で行動していたセキレイ、辺りが薄暗くなるとパラパラと集結。
何故か直ぐにはねぐらの木に入らず、しばらく近くのビルの屋上にとまってざわざわしている。
そしてある時一斉に、ねぐらの木に入るという。
セキレイどうし合図をするのかなど、はっきりした事は分かってはいない。
もしかしたら安全確認後に号令をかけているのかもしれない。
保安や保温のために冬場を集団で過ごす鳥は多くいて、シジュウカラはセキレイとは逆に、昼に群れて夜は穴で1羽ずつ眠るのだそうだ。
集団ねぐらに選ばれるのは、車の往来が激しかったり人間のすぐ近くにもあるかなり人工的な場所。
何千羽も集まる大きな橋の下、駅前のビルや広告塔など、地域で有名なねぐらもあるらしい。
<生態>
ハクセキレイは基本的に昆虫食。
植物の種や人が出した生ゴミの欠片なども食べる雑食でもある。
この時期だけではなく地面を歩き回っていることが多い鳥で、昆虫の死体や草の種や食べられる小さなゴミなどを、道路なら見通しがよくて探し易いと分かっていて歩きまわっている。
又この時期にはあまりなが、道路は車にはねられた虫の死体がたくさん落ちている時もあり、コンビニの駐車場でもウロウロしている。
お菓子のかけらや弁当のご飯粒、そういったものを探す利口な鳥。
長い尻尾を上下に振りながら歩く姿が可愛い。
スマートなボディと、地上生活するにも便利な長い脚、スズメなどに比べてスタイル抜群なので、よく目立つ。
セキレイの仲間は、尾を上下に振りながら歩くのが特徴で立ち止まって辺りの様子を伺う時も尾だけはチロチロと振り、ウトウト寝ていも振っていて熟睡すると止まるともいう。
何故振るのかは分かっていないそうだ。
尾を左右に振るイワミセキレイという希少な種類もいて、野鳥の神秘を感じさせる。
<名前の由来>
「セキレイ」という名は、中国での呼び名「鶺鴒」を音読みしたもので、「背筋を伸ばした美しい姿勢の鳥」という意味。
たしかにスーッと良い姿勢だ。
セキレイにはたくさんの別名があり、尻尾の動きが石などを叩いているように見えることから「イシタタキ」「イワタタキ」「ニワタタキ」などとも呼ばれ、先にも挙げた「オシエドリ(教鳥)」「コイオシエドリ(恋教鳥)」「トツギドリ(嫁鳥)」「トツギオシエドリ」「トツギマナビドリ」「ミチオシエドリ」など何故か知的な香りの呼び名ばかり。
古に人家の庭を叩きながら、どんな教えを説いていたのだろうか…
<意外にも激しい性格>
「叩く」というほど激しい動きには見えない気もするが、セキレイは見た目の可愛いさに似合わず、けっこう激しい性格。
闘いのルールや力関係を重んじるともいわれているおり、背筋を伸ばしピシッとしている。
<まとめ>
もしかしたらこの鳥が居なかったら日本人は存在しなかったのかも知れないと思うと私は一気にこの小さな野鳥が好きになった。
確かに人前でも平気でトコトコ歩く姿をよく見る。
可愛いらしいが実は、鞭を振るって道理を教えるという感じがカッコイイ。
少々厳しめな先生の様なイメージだ。
【ハクセキレイ】https://youtu.be/oQzMgjGRwcY