<600万人もの就労困難な人を支援>
日本財団の調べでは、ひきこもり、ニート、刑余者、難病、様々な依存症などが原因で働くことが難しい日本における就労困難者の数は約600万人と推定され、その一方で、少子高齢化による労働力不足が加速、2035年には労働者が761万人不足すると予想されている。
働きづらい人達が数多くいながら、労働力不足が深刻化、その様な状況を打破するために2018年に日本財団「WORK!DIVERSITY プロジェクト」が創立された。
600万人もの“働きたくても働けない”就労困難な人を支援する、その新しい「就労支援」のかたちとは?
<6つの地域でのモデル事業>
働きづらさを抱える全ての人が丁寧な就労支援を受けることが出来る様に、その効果を検証するために現在、岐阜市、千葉県、福岡県、豊田市、名古屋市、宮城県の6つの地域でモデル事業を展開。
既存する障害者の就労支援施設を活用し、ニーズに合った訓練や支援を提供する事で多様な困難者の就労を実現。
障害者手帳は出ないが、働きづらさを抱える所謂グレーゾーンの人達。
「障害者」と診断されず、支援の狭間に陥り易い人達もサポートしているという。
働きづらさを抱える人達、例えば、何らかの障害がある人や家族の介護で自分の時間を調整できない人達が、その一例で、中には、大学生活はそれなりに送れていて単位もちゃんと取れているのに、就職することが出来ない、そんな曖昧なところで困っている人達も含めて支援をしている。
<彼らが社会で活躍する為に必要な支えとは>
サステイナブル・サポートを立ち上げるきっかけとなったのは、発達障害がある人の就労を支援する福祉サービスだった。
彼らは目の前でポロポロと涙をこぼし、大学を卒業しても就職が出来ない、就職出来ても、上手く行かず、すぐに離職、周囲からは仕事が出来ないと見られ、どうしたらいいのか分からず、ひきこもりがちになる。
死にたいと思う人もいた。
そこで「問題が複雑化する前にサポートすることの重要性」に気付かされる。
つまり「死にたい」と追い詰められてしまう前に、彼らと出会い、支援することで彼らの生きづらさの軽減に繋がるのではないか、そう考えてスタートさせたのが、大学生向けのキャリア支援プログラム。
先ずは予防的にサポートするのが狙いだったという。
そこから日本財団出会いを経て「WORK!DIVERSITY プロジェクト in 岐阜」を始めるに至った。
<プロジェクトの内容>
全国に600万人もいるといわれる様々な事情で働けない人達、一方で就労支援施設が全国には1万5,000カ所以上あり、現行の制度では利用出来るのは障害がある人達のみ。
それをどうにか活用出来ないかと、2018年から調査や検討を重ね、実証化モデル事業としてスタートしたのが「WORK!DIVERSITY プロジェクト」だという。
障害者に限らず、働きづらさを抱える人達に向けて就労支援施設を開放することで、より多くの人が活躍できる社会を実現することを目的とし、岐阜市はそのモデル事業を実施する自治体の1つになった。
「ノックス岐阜」という就労移行支援事業所では、就職に必要な知識やスキルが学べ、その他、宿泊施設を運営する就労継続支援B型事業所の「アリー」、保護猫カフェを運営する就労継続支援B型事業所「シャンツェ」は相談に訪れた方々のニーズに応じて、それぞれの事業所を紹介している。
<働く上で大切なのは自分の意思>
就労困難者を受け入れる側である企業も、理解を深める必要がある。
例えば「自分は支援を受けちゃいけない」と、そもそも支援を受ける発想が無く、支援を受けること自体に抵抗があったりする。
幼い頃から支援を受けてきて、その成功体験があれば、いざというときにSOSを出せますが、その経験もないので自ら助けてほしいと声を上げられない人が多いという。
本来は一般企業側も障害のある人も、お互いに理解を深めていくところからスタートすることが大事。
障害者手帳を持っていない人達はハードルが上がり、彼らを雇用しても、企業の法定雇用率には加算されない為、わざわざ一般就労の枠で雇用するメリットがあるのかと思われがち、その懸念をクリアする為には、一般就労の枠で就労困難者を雇用した企業に対して、何らかのインセンティブが得られる様な法整備の検討も必要だという。
岐阜市では、上場企業を巻き込んだ検討会も開催していおり「WORK!DIVERSITY プロジェクト」の取り組みに関心がある中小企業も含めて18社が集まり、就労困難者の雇用促進について、知恵を出し合っている。
<まとめ>
ポイントとなるのは、企業が就労困難者とどう向合って行くのかというところ。
「WORK!DIVERSITY プロジェクト in 岐阜」がスタートして、利用者は計47名、そのうち現時点で13名が就労達成したという。
これは少子高齢化による生産年齢人口減少が進む岐阜市に拠点を持つ企業が比較的協力的だから、という側面もあり、ただ、これを全国規模で考えるならば、地域性に左右されない仕組みが必要だと考える。