<精神疾患と生活保護との間の密接な関係>
生活保護の相談の中で、心の病や精神的な苦痛にさいなまれ、仕事はおろか日常生活さえままならなくなってしまった若い世代は以外と多いそうだ。
これは、現代社会の問題の一つだと気付くべきで、一方で、精神疾患を患った人が悪質な精神科・心療内科病院に、いわゆる食い物にされるというケースが実際に発生しているという。
その背景に、世の中に根強い「精神疾患は甘え」「働こうと思えば働ける」といった誤解と偏見がある。
心の病や生活保護が甘えだという偏見を排除することは、個人の問題ではなく社会全体で行わなければならない課題だと思う。
<ある男性の悲痛な体験>
なんと働いていた会社が労働保険に未加入で障害年金を受けられずというものだった。
その男性は精神疾患により働けないほどの病状に陥り、障害手帳2級を保持。
障害年金の受給要件を満たさず、生活に困窮していた。
両親は早くに亡くなり、頼れる親族はいない。
住み込みで正社員として働き、上司や同僚による暴言や不正行為の指示などに耐えかね、出社できないほどに追い詰められ、会社を退職してしまう。
どうにかこうにか、知人宅に身を寄せるも、いい加減出て行ってほしいと、次第に追い詰められてしまう。
気力を振り絞り、失業保険を利用しようとハローワークに出向いたところ、そこでようやく、前職での雇用保険の未加入が発覚。
そもそもパートでもアルバイトでも、1人でも労働者を雇うと、会社は「労働保険」に入る義務があり、労働保険とは、業務や通勤による負傷や死亡などの際に保険給付を行う「労働者災害補償保険」と失業給付などを行う「雇用保険」を総称したもの。
政府が管理運営する強制的な保険、従って事業主は労働保険料を納める法的な義務が発生する。
労災保険の保険料は全額事業主負担だが、雇用保険の保険料は労働者と事業主が折半して負担する。
男性は毎月の給与からこの雇用保険料が天引きされていたにもかかわらず、会社が雇用保険の加入手続きをしていなかったせいで失業保険の対象外となっていた。
<不運はそれだけではなかった>
平成22年(2010年)10月1日からは、雇用保険料が給与から天引きされていた事実が確認できれば、さかのぼっての加入が認められるようになった。
ただ、それより前に離職した人は救済の対象とならず、男性は在職中に保険料を払っていたのに、失業給付を受けられなかった。
不運はそれだけにとどまらず、健康保険料や厚生年金保険料も給与から天引きされていたのに、年金事務所からは記録がないと言われる。
つまり、それが理由でうつ病で障害手帳2級を認定されても、障害年金を受給することができません。年金事務所からは、弁護士に相談するよう告げられた。
しかし、法テラスの弁護士相談でも、既に会社は倒産しており法的な責任追及も難しいと、さじを投げられる始末。
これを機に男性は社会不信で絶望し、その頃から更に精神的不調が大きくなったという。
<無事に生活保護は受けられたものの>
男性は知人宅を出て一人暮らしを始めるも、 無気力で食事を用意することもままならず、コンビニでおにぎりなどを買って命を繋いでいた。
ある日、声が出なくなっていることに気付き、心療内科に受診、やがて通院するようになった。
そして、行政書士に連れられて役所へ同行し、事実経緯をすべて説明し、無職、無収入、無資産が認められ、直ぐに生活保護の決定を得た。
ところが、無事に生活保護受給は出来たにもかかわらず、役所の職員からはその心療内科には行かないほうがいいと不穏なことを言われる。
なんと必要以上に薬を大量に処方するという悪評病院だったのだ。
福祉事業所は、通院している生活保護受給者には病院を変えるよう助言しているという。
これは、その心療内科で処方された余計な薬を飲まなければいいという単純な話ではなく、金儲けを優先する悪徳病院に気付いた男性は怖くなり、服薬をやめようとした。
すると、突然、痙攣発作を起こし、救急車で運ばれてしまう。
精神疾患の治療のため処方される薬は、一度服用を始めたあとに自己判断でやめると、深刻な副作用が起こることがあるという。
悪徳心療内科の患者囲い込み、クスリ漬けで人生が破壊されるケースもあるほど。
<30代女性の類似する事例>
30代のある女性は、産後の不眠からある心療内科を受診したが、30分にも満たない診療時間の中で、学歴や職歴などおよそ病状と関係なさそうな質問をされた揚げ句、多様な薬を大量に処方される。
真面目だった女性は、出された薬は症状改善のため、飲まなければいけないという思いで、処方された精神薬を服用し続ける。
最初は一瞬で眠りに落ちたはずの睡眠薬は、徐々に効かなくなり、症状は徐々に悪化、日常生活も困難になり、寝てばかりの妻に夫が耐えられなり、最終的に家庭は崩壊。
女性は、仕事が出来ず頼れる人もなく、やむを得ず生活保護の申請へ。
つまりこれは、心療内科や精神科病院などが患者を囲い込むようにして過剰な投薬を続け、結果的に患者がクスリ漬けにされるというケースだ。
<恐ろしい儲け第一主義の考え>
患者を治したいと考える医師は雇わない、薬漬けにすれば製薬会社も儲かり、退院させなくて済むと考える病院経営者は実在する。
福祉事務所からも、あの病院には行かないようにと、生活保護受給者が助言されるほど評判が悪い病院が営業を続けている現実がある。
恐ろしいのは、知らずに訪れた人が不要な投薬によって、長期的に生活を壊されるという構造が合法的に成立してしまっているという点。
精神医療の制度が抱える、クスリ漬け、囲い込問題が背景にあるのは当然なこと。
そればかりではなく、社会において精神疾患を抱える人に対して「社会から排除してよいもの」「健常者より劣る存在」との偏見と差別意識が依然として根強く、その人権や尊厳が軽視されがちだということも否定出来ない。
<データが示す現実と制度に求められる精神的支援>
一般的に、経済的な困窮によって精神的な余裕のない状態が続くと、心のバランスを崩してうつ病を発症するリスクも高まると言われている。
実際に、精神疾患と生活保護との間には、統計上、密接な関連性が見いだせる様で、生活保護受給者の精神疾患の罹患率は、一般の国民よりも高いことが複数の調査で示されている。
生活保護受給者の入院患者のうち4割以上が精神疾患を抱えているか、うつ病の診断を受けているという。
会計検査院「国会及び内閣に対する報告」(2014年)では、生活保護を受給していない人の入院患者の内、精神および行動の障害がある人の割合が18.7%であるのに対して、生活保護受給者の入院患者での同割合は47.8%と3倍近く多くなっている事実がある様だ。
つまり、生活保護受給者には経済的な支援だけでなく、精神的なサポートが不可欠であることが強く示している。
<ひとりで抱え込む>
これらの背後に見えるのは、精神疾患に苦しみながら、それを誰にも打ち明けられず、1人で抱え込んでいる人達が居るということ。
彼らにとって生活保護の相談や申請・受給の手続き自体が大きな負担、複雑な書類作成や面談で過去のことを思い出して話さなければならないので、更なる精神状態の悪化が悪循環を起こす。
生活保護申請、受給に至った背景には、積み重なった心の傷が深くかかわっていることが多々あり、単に経済的な支援だけでなく、過去のトラウマや心の傷に寄り添う支援が必要。
<まとめ>
心のSOSは見過ごされがちで、働きたくても働けなくなってしまう人が減らし、一度患った心の病を治して再び元気に働ける人が増えるように、生活保護や精神疾患のいずれについても偏見をなくし、社会全体が改善のため取り組んでいく必要がある。
人は全て、自分らしく生きる権利を持っているのだから、柔軟で温かい社会であってほしい。