<プライドが邪魔をする>
年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70歳男性の就業率は45%、80代就業者の約9割が自宅近くで働く。
定年後は、正規雇用の職を辞し、非正規やフリーランスとなって働き続ける人が多数派だが、大企業で高位の役職に就いていた人にとっては、こんな小さな働き方はプライドが邪魔して前向きに受け止められないかもしれない。
定年前後を境に会社での処遇に厳しさが増すなか、自身の経験が活かせる仕事を探し、外部労働市場に打って出る人もいる。
ところが長く勤めた会社を離れた後に多くの人が直面する労働市場の構造が邪魔をする。
<50代以降の転職は賃金増加は困難>
転職市場に目を移せば、これだけ転職が一般化しているなかにあっても、厚生労働省の転職者実態調査によれば中高年の転職は依然として厳しい状況。
40代前半までは、転職で賃金が減少してしまう人よりも転職が賃金の増加につながる人のほうが多い。
定年前後の転職がいかに難しいか、定年前後で自社の待遇に満足できず他社に活路を見出そうとする人もいるが、応募しても面接にも辿り着けないという厳しい現実も実際にはある。
こうした事象が生じているのは何故かと考えれば、まず第一に求職者側の問題があり、中高年になって転職しようとする人の中には自身のこれまでの経験を過信し、名のある大企業における就業や高い役職に固執してしまう人もいる。
ただ、企業としては当然ビジネスで利益を生み出してくれる人材がほしい為、転職先で活躍したい場合、役職にこだわらず若い世代と混じって一定の競争をすることが必要。
<変化の激しい現代>
デジタル技術がビジネスにも浸透する現代。
仕事のやり方が数年で変わってしまうことも珍しくない変化の激しい時代においては、過去の経験は必ずしも通用しない。
むしろ新しいビジネスの妨げになり、ビジネスの最前線で生涯活躍しようと考えるのであれば、たとえ若い頃に仕事で大きく成功し管理職の座を勝ち取った人であっても、利益を上げ続けられるよう知識のアップデートを続け、若い人に負けないような実績を築き続ける必要がある。
ただ、企業側の受け入れ姿勢にも問題は多く、実際に、能力が高くその企業で貢献できる高齢求職者がいるのに年齢だけを理由に採用に迷う企業は世の中にたくさんあるという。
生涯企業の最前線で活躍しようと考える人が活躍の場を見つけられるよう、公平な労働市場を構築することも日本の労働市場の大きな課題だと思う。
<まとめ>
中高年の転職市場がうまく機能していない要因には、求職者側と受け入れ企業側の双方に課題がある。
そして改めて当事者の観点でこの問題を振り返ってみたとき、現役時代の延長線上での働き方を本当に生涯を通じて続けていかねばならないのかということについては、ひとりひとりが現在の自身の状態や家計の状況と向き合いながら熟考する必要もあるだろう。
定年後の家計は、定年前の家計とその様相をがらりと変わる。
他者との競争に打ち勝って、名のある企業で高い役職を得るというキャリアを一心に追い求め続ける人は多いが、定年後もそうした働き方を追い求めることが本当に自身にとって望ましいのか考えると、実はそこまでの働き方は必ずしも必要ではないことも多い。
50代以降の転職は遅きに失するというのが現実。
定年後に年金でそれなりの生活ができないことが問題の根本にあり、政府としては何とか企業に対し再雇用促進をお願いし、年金の財源を増やそうとする。
働く方にとっては定年後の再雇用、低賃金の環境で活力を見いだすのは難しい。
働き盛りには年金の取り立てを厳しくし、年金受給年齢に到達した人には出し渋りが見え見えで、高齢者には生活しづらい世の中になっているのではないか。