<休める組織の実現>
リクルートホールディングス傘下のリクルートは、昨年4月に関連会社7社を統合したそうだ。
それを機に同社の従業員約1万6000人を対象にした「フレキシブル休日」制度を導入した。
これは、暦上の土日祝日や年末年始などの各種休暇、年次有給休暇とは別に、年間15日前後(暦に合わせて変動)の休日を自分で設定できるというものだという。
フレキシブル休日の導入で年間の休日は145日に増え、週当たりの休日に直すと、約2.8日という、週休約3日制になった。
年間の所定労働時間(1800時間)については、1日当たりの所定労働時間を7時間30分から8時間に変更することで維持し、給与額の変更などもない。
<休める組織を実現出来た理由>
リクルートの週休約3日制、何故休める組織を実現出来たのか。
フレキシブル休日について、リクルート スタッフ統括本部人事担当者の話によると、リクルート各社を統合するに当たって、マネジメントポリシーやそこに向けた制度をどう作っていくかを議論し、出社しないことを前提にしたリモートワークも全社的に導入したが、そうした働き方がさらに進んで行った時の10年くらい先を見据えた制度と説明している。
リクルートの経営理念の1つに「個の尊重」があるり、個人のワーク・ライフ・バランスがある中で、ひとりひとりの働き方や状況に応じて、働く・休むのメリハリを付け易くするのが狙いだそうだ。
<自由度の高さ>
2日しか休まなかった週の翌週に4日の休みを取るとう自由度の高さも、自分で休日を設定できるフレキシブル休日制度ならではという。
画一的に週4日働き、3日休むということではなく、休み方も柔軟に設定できることをコンセプトに年間の休日を増やした結果、週約3日制になったと語っている。
休日が増えた分1日当たりの労働時間は平均で15分延びたものの、年間の総労働時間は平均50時間ほど減少。
フレキシブル休日の導入は年間総労働時間の短縮にも効果があったようだ。
<フレキシブル休日を使い切れない人もいる?>
懸念材料として、導入した制度を利用してもらえないのではないかという事だったらしい。
リクルートの社員には、働き始めると没頭してしまう人が少なくないという。
フレキシブル休日で休みを増やしたものの、休日出勤をする人や休日分(15日)を消化しきれない人が出てくる可能性も考えたという。
そこで人事部が編み出したのが、上半期(4月)と下半期(10月)の初めに、あらかじめフレキシブル休日を設定してもらうという方法だった。
半年先の休日を決めるのは難しいと思われるが、勿論その時の状況で(休日を)動かしてもらって構わない、休むことを先に決めてもらい、事業部・チームにはその前提で動いてもらう。
先ずは、休むことに慣れてもらうのが重要だったとフレキシブル休日の導入時を振り返っている。
<まとめ>
この方法は一定の効果を上げており、2021年3月度前期におけるフレキシブル休日の取得率は98%を記録し、フレキシブル休日とは別に取得できる年次有給休暇の消化率は73%に向上したという。
休日が増えて休日出勤が減り、年間の総労働時間が短縮されて有休消化率も向上と聞くと、気になるのは生産性だが、1つの案件を2人以上で担当することで、誰かが休んでも支障なく業務を進められる体制を作ったそうだが、それでは各自の業務が増えてしまったのだ。
業務の引き継ぎなど、1つの案件を複数人で担当することへの初期的な負荷はあったものの結果的にはきちんと休めるようになり、自分が休みの時も顧客に対応してもらえる体制ができ、案件を1人で抱えず、組織として担保することが各自の生産性の向上にも繋がったという。
週休3日制は生産性や給与体系とセットで語られる事が多いが、リクルートの事例を見れば、働き方改革と生産性の向上は両立すると分かる。
フレキシブル休日は、週休3日制の理想形だと言える。